「『靖国』公開祈願トーク」
聴講(?)日時 2008年4月3日19:30~23:00(休憩含む)
昨夜、新宿歌舞伎町のロフトプラスワン(http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/)で、「『靖国 YASUKUNI』公開直前トーク!」と銘打たれたイベントに行って来ました。出演者は、前半が、鈴木邦男さん(一水会顧問)、宮台真司さん(社会学者)、末井昭さん(白夜書房編集局長)、この映画の配給・宣伝に協力しているアルゴ・ピクチャーズの細谷さん。後半が、鈴木さん、末井さん、細谷さん、それから、『靖国の闇にようこそ―靖国神社・遊就館非公式ガイドブック』などの著書がある、辻子実さん。司会はロフトプラスワンの加藤さん。
先に、以下の文の中で、個々の人が言ったとしている部分は、それぞれの人から確認を得たものではないことをお断りしておきます。
ことの経緯をわたしが知る範囲でまとめると、
- 週刊新潮が『靖国』を「反日映画」と報道した。
- そのような「反日映画」に文化庁が助成を行っていると知った衆議院議員の稲田朋美議員がこの映画が観たいと文化庁に求め、議員対象の試写会が開催された。
- 稲田議員は「この映画には、政治的メッセージが含まれており、国の助成金が使われているのは問題だと思うので、適切な措置を求めていきたい」とした。
- その一方、この映画の上映を予定していた新宿バルト9が上映中止を決めた。
- その後上映を予定していた都内の映画館がすべて上映自粛を決めた。
- 名古屋のシネマテークが上映延期を決めた。
というものです。わたしはこの映画をまだ観ていませんが、感触としては、政府の方針をもっとあからさまに批判したり、第二次大戦中の日本の所業をもっと批判的にとらえたりしている演劇を自分はいくらでも観たことがあると思うし、一方で「助成金を受けています」というチラシはかなりの頻度で見かけるし、どれがどれと一つひとつ覚えているわけではないけれど、稲田議員の意見にしたがえば、政府の助成金を受けるなら政府の顔色を見ながら芝居を作らなければいけないということになって、そんなことになったらいやだなぁ、と考え、このイベントに行くことにしました。
で、知ったことは、事実は、マスコミが報道していることと少し違うみたいで……、上映中止を最初に決めた新宿バルト9(丸井が入っているビルにあるらしい)に対して、実際には営業妨害は全くなかったそうです。銀座シネパトスに対しては、3/20(木・祝)と3/23(日)に街宣車が来たことと、右翼からと思われる電話が来たそうですが、両方とも2回ずつくらいで、長時間にわたる執拗なものではなかったとのこと。残りのQ-AXシネマおよびシネマート六本木に対するいやがらせは全くなかったそうです。鈴木邦男さんは、「あのくらいで自粛ということになって、稲田議員も右翼もむしろびっくりしているに違いない」と話していました。
問題は、「表現の自由(の大切さ)よりも『亡霊』におびえる市民社会」(宮台さん)ということのようです。グランドプリンスホテル新高輪が日教組の教育研究全国集会の会場使用を拒否した件と同質のもの、という言及もありました。
出演者の中で、鈴木邦男さんのトークが自分にとっては格段におもしろかったです。「妨害している右翼も、実際映画を観ていないのに反日と決めつけて動いているのだから、新聞社は、安全な場所から批判するだけじゃなく、自社ホールで右翼を集めて上映会を開いたらどうだ」「右翼には、参考にしている雑誌がいくつかあり、『週刊新潮』にああ書かれたら、自分たちが行かざるを得ないという気分になる」「公開前の議員試写会は、国政調査権などと言っているが、検閲に相当するもので許されない。国民に見せないで自分たちだけで判断しようとするのはおかしい」「グランドプリンスホテル新高輪は、右翼の思想に賛同してではなく、右翼が単にウルサイから日教組の集会を断わった。これは、右翼の勝利ではない」「右翼が(映画館に)来たら、鈴木を殺してから来いと言え」
宮台さんのお話は、理解につとめるのが精一杯でノートに書ききれなかった部分も多かったのですが、書けた部分を抜粋します。「社会科教科書のような映画で、反日映画だと思って観ると拍子抜けする」「土俵を守ることが重要」「気に入らないという意見も気に入ったという意見も表明できる制度を守るべくコミットすることが大事」「興行を中止するのは興行主として筋が通らない。いろんな意見が出るのが健全なルールで、音がうるさいなどの不便にも目をつぶって守るべき大事なものがある。『表現』に対して日ごろから考えていないのではないか」「映画館もホテルも、公の場であり、何か起こった時の対処のしかたをふだん考えていないのではないか。対処するための知恵と工夫を使うプロセスはあったのか?」「社会が変化しており対処がチグハグ。リスクを小さくするために何をすべきか考えないといけない」
後半、「反靖国研究家」(?)の辻子さんがいろいろなグッズを持って登場、楽しませてくれました。靖国神社が発行しているパンフレットには、日本語版と英・中・韓三カ国語版があり、後者では、神社内にある、東京裁判で裁判の無効を訴えたパール判事の顕彰碑が省略されているそう。このことは、辻子さんによれば、「靖国神社は、本音のところでは東京裁判を否定できていないことを表しているのではないか」とのことでした。また、辻子さんは、参拝はしなくてもいいから、靖国神社と、神社内の遊就館に行ってみることを勧めていました。たとえば遊就館では南京事件について、日本軍はゲリラを殺しただけという説明になっているそうです(国際法では、軍服を脱いでゲリラ化した相手を殺すことは、有罪ではないとされるらしいです)。また靖国には、沖縄戦で、日本軍に母親が場所を譲った結果死んだ赤ん坊が軍属として祀られているとのことです。
辻子さんはまた、(社)日本青年会議所が製作し、全国の学校にDVDとして配られたアニメーション『誇り』の一部も見せてくれました。(このアニメの内容については、検索するとすぐわかります。)
最後のまとめにあたって、鈴木邦男さんは、映画の内容の一部について疑問に思うところがあり、李監督に尋ねたところ、その点については監督は自信があるとの答えだったそうです。(ちなみに、李監督は、三島由紀夫の大ファンだそう。)
都内の映画館から上映の申し出がいくつかあり、調整中らしいです。来週、配給会社から公式の記者会見があるそうです。政治家から上映会の申し出もあるそうで、今後の成り行きを見守りたいと思います。
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